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フィクションであれ

屋根のない喫煙所のポールの一部が濡れていなかった

聖書研究の講義で文章の初めをそのまま題名として使うことがよくあった、という部分だけ聞こえたのでそうしてみる。

屋根のない喫煙所の座れるポールの一部分が濡れていなかった。昨日は雨だった。誰かが構わず座ったか、座るために拭いたんだろうけど、その時の寒い私、自分が書いた宗教に対する批判的意見についてのミニレポート的なものを精査したい私、煙草を吸いたい私にはすごくありがたかった。

以前、と言っても4ヶ月前、友達と飲んでるところにその店の閉店時間間際に声をかけてくれたお兄さんから久しぶりに京都に用事ができて行くんですけどよかったら夜飲みませんか?とメッセージが来た。ちょうど飲み相手を探していたから二つ返事でOKした。1杯目のハイボール、お兄さんに「やっぱハイボールおいしいですね」と言った。でも、私は普段ハイボールは飲まない。味がないからそんなに好きじゃない。どうしてそんなどうでもいい嘘をついたのかわからない。多分、今の話題性のないこの場に小さくても共通項を作りたかったんだと思う。健気だな。

2軒目はバーだった。そしたら案内してくれたバーテンダーは顔見知りだった。「あなたここなのか!今のタイミングでいちばん会いたくないコミュニティの人だ、この人私のセフレの知り合いだ、ていうかここ系列店なんだ、系列店近いな、そりゃそうか」と脳内が目まぐるしかった。どうにかよきにはからってくれと祈っていたら何も言わずにいてくれて、私もこういうことができる人になろうと誓った。一緒に来ている彼が席をたつタイミングで「あの、一度お会いしましたよね」と言ったら「はい、なんかどうしたらいいのかわからなかったんでとりあえず知らないふりしときました笑」と言ってくれた。本当にありがとう。

ウィスキーの飲み比べもさせてもらった。アードベック、グレンフィデック、知多、ワイルドターキーの4種類。私は心からアードベックが好きだ。

帰りも目配せされた。どうだ、望み通りの結果か。

東からあがる太陽はやっぱりどの時間の太陽とも違う。朝の太陽は温度が低そう。朝日は誰にでも嫌と言うほど平等だと思う。

電車の中でお腹が鳴ってる。すごく悲しそうな音。恥ずかしい。みんな始業前なんだから寝てなよ。

渡り歩く夜ほど無価値で、でも即時的かつ一時的に有用なことはないなと思う。私は通勤通学ラッシュの電車に崩れたヘアセットで乗り込み、下を向くばかりの人の流れの中を逆行して寒いなあとつぶやきながら家まで自転車を漕ぐ時間が嫌いじゃないけど、朝思い返すあの夜はあってもなくてもよかったとしか思ったことがない。私は寂しいのだろうか。彼は33歳、おそらくもっといろんな33歳の人がいるのだろうが、もし、あれが33歳の人間なのであれば、33なんて年齢は大したものじゃない。

先週は寝坊したけど、今日は一限に行けそう。そろそろ最寄りに着く。

おわり